前編ではおふたりに、農林水産業がなぜ必要かということ、さらに今まさに発展途上にある労働環境の変化について語っていただきました。「転職したい。農林水産業に興味はある。でも…」と二の足を踏む必要はないと思っていただけた方もいることでしょう。
後編では、農林水産業を仕事にすることの魅力、そして今がそれを検討する絶好の時期という理由についてもお話ししてもらいます。

山田英也農林水産省 北海道農政事務所長
1987年、東京大学農学部を卒業。同年、農林水産省に入省。
コメや農地等の政策、在イタリア日本国大使館等での国際業務、日本産農林水産物・食品の輸出促進等を担当。
2020年1月に札幌に赴任。食料基地・北海道農業の振興に取り組む。

池本博則株式会社マイナビ 地域活性CSV事業部事業部長
2003年、株式会社マイナビへ入社。国内外大手企業の採用活動の支援を担当。
2017年8月、農業情報総合サイト『マイナビ農業』を立ち上げ、農業分野に参入。
2021年10月に農林水産業に特化した求人サイト『マイナビ農林水産ジョブアス』をリリース。「農林水産業の未来を良くする」というビジョンを掲げ、「楽しい」「便利」「面白い」サービスの提供に奔走している。
「厳しい仕事」。そのイメージを変えて行く
池本農業界の労働環境が随分変化しているというのは前編でもお話ししてもらいましたが、事業自体も多様化が進んでいますね。
山田はい、私は女性だけのコントラクター(農作業受託)会社のことを知った時、正直驚きました。農林水産業は『力仕事できつい』というイメージが根強いですよね。農業機械やIoTが進化したことで、そのイメージは過去のものになりつつあると思っています。
池本自分の力が及ばないところは社内メンバーで補い合い、それでも手が回らない部分は外部委託をしたって良い。こういった仕組みが広がっていくとより労働環境の改善が進むでしょうね。
山田『農家さんは一年中、休みがないから』と仰る方は未だにいらっしゃいますが、酪農家でもそんなことは少なくなりました。繁忙期を外して、毎年家族で海外へ出かけているという話も決して珍しいことではないんですよ。
池本転職先を選ぶ際、休日などの条件はとても重要。私たちがしっかり正しい情報を伝えて、昔から続いているイメージを変えて行かなければいけませんね。

農林水産業もグローバル化が進んでいる
山田終身雇用が当たり前という時代が終わり、別業種で社会人を経験してから農業界へ来る人が増えていますね。親和性が高い人が増えているのだと思います。
池本社会人経験を積んでから親の畑に戻る人はもちろん、農業は初めてという方もですね。地域や農林水産業に関心をもって、インターネットで調べて…という流れができました。半農生活を始める方もいらっしゃいますね。
山田生産者の顔がSNSで見えるようになった影響は大きい。みなさん、良い表情で働いていますから。就農後も、遠方の生産者同士が気軽にやりとりできるし、海外の情報も簡単に手に入るようになった。過去を踏襲するだけでなく、新しい技術や考え方に挑戦できる土壌が出来上がっているのです。

国と農家が近いからこその充実した補助
池本「あまり知られていないですが、農林水産業の分野では、補助金など国のバックアップが他の業界に比べて手厚いのも大きいのでは?
山田よくぞ話してくれました(笑)。大雨や干ばつなど、農林水産業はどうしても自然の影響を受けやすいのです。バックアップなしで産業として成立すれば理想的ですが、なにせ自然相手の仕事です。セーフティネットを国が提供しなければ、農業への挑戦も難しいですから。
池本制度作りは農林水産省の大事な仕事ですが、情報収集はどのように行っているのですか?
山田実は農家の方が直接、農林水産省までお越しになって、手厳しいご意見をくださるのです(笑)。現場の生の声をもらえることは、政策作りの大きな助けになっています。
池本それはすごい!農林水産省は現場の人と近いのですね。自分が経済産業省に乗り込んで意見を言うなんて想像もつきません(笑)。
山田生産者の方が自分の仕事に誇りをもって、どんどん声を上げるようになってきました。それに共感する若い世代の方も増えていて嬉しく思っています。就農はもちろん、継続へのサポートも様々ありますから、発信を強めていこうと考えています。
「転職するなら農業」という人が増えるように
池本これまでは転職を考えても敬遠されがちだった農林水産業ですが、今後は『農業しか考えられない!』というような人を増やしていきたいですね。そのために『ジョブアス』のコンテンツをより充実させていきますよ。
山田農業の世界へ飛び込むことは、その地域を活性化させたり、福祉に貢献できたり、自然を守ることにつながったりと、収入以外のやりがいもたくさんあるんですよね。色々な働き方や成功事例を知らせていくのも国の仕事の一つだと思っています。
池本転職の形は本当に人それぞれ。自動車のエンジニアをされていた方が海外勤務時代に農地のそばに住んだことがきっかけとなり、帰国後、農家に転身したそうです。元々自然志向の強かった家族も喜んで、会社員時代より儲かっていると笑って話してくれました。
山田農村のコミュニティのあり方も変わってきました。新たな仲間を迎え入れて、挑戦を歓迎してくれるようになっています。
池本周りの農家の方、全てが先生になってくれる。その触れ合いも農林水産業の魅力ですね。

『いま、農林水産業って最高だ。』は本当だ
池本マイナビ『ジョブアス』のキャッチフレーズは『農林水産業って最高だ!』なんですよ。
山田それは本当にその通りですね(笑)。相手が自然と人間ではストレスの質が全然違います。人間は花を見たら癒されるし、野菜を育てるのだって楽しい。誰もが何かしらの自然志向を持っているのだと思います。
池本現在の『ジョブアス』は採用情報が中心ですが、多くの成功体験を集めて、農業への転職に関心をお持ちの人に勇気を与えられるサイトにしていきたいと思います。
山田農林水産業は誰もが出来て、みんなに感謝される仕事。自己実現もできる。こんな素晴らしいことはないですよ。何かあったら、すぐに農林水産省に相談してください(笑)。
池本転職には準備も覚悟も必要なのは確かです。でも農業は可能性が溢れています。日本のある分野を支える第一人者になれるかもしれませんからね。

取材協力
農林水産省 北海道農政事務所
〒064-8518
北海道札幌市中央区南22条西6丁目2-22 エムズ南22条第2ビル
TEL: 011-330-8800
https://www.maff.go.jp/hokkaido/
ロケ地提供
(株)箱根牧場 北海道箱根牧場
〒069-1181
北海道千歳市東丘1201
http://www.hakonebokujo.com/


ホルスタインのほか水牛やジャージ牛との触れ合い体験のほか、手作りソーセージに挑戦したり、モッツアレラチーズなどの自社製品を扱ったレストランでグルメを楽しんだり、北海道の酪農を丸ごと体感できる観光牧場。
アクセス:新千歳空港から車で40分