農業の用語集
- 新規就農
- 新しく農業を始めることを新規就農と言います。ここで言う農業のくくりは広く、畑作だけではなく酪農や畜産も含まれます。一般的な「転職」と同じ意味の言葉であり、新規就農の方法として雇用就農や独立就農などのさまざまな就農方法があります。
- 雇用就農
- 農業法人など、すでに農業経営を行っている団体・企業・個人と雇用契約を結ぶことで労働者として就農すること
- 親元就農
- 両親またはどちらかが経営する事業体を引き継ぎいで就農すること。かつては実家が農家で、親または家族が行なっている事業を引き継いで、次期経営者となるケースが多かったが近年は減少傾向となっています。
- 半農半エックス
- 「半農半X」と記載することもあり、読み方は「はんのうはんエックス」。農業のみを生業にするのではなく、農業とは別に生計を営む事業と農業を組み合わせて生活を営むライフスタイルをあらわす言葉。コロナ禍によりテレワークが促進される中で、都心での仕事を持ったまま地方に移住を望む若年層から注目を集めた。収入のための農業ではなく、家族との時間や自然との関わりなどのQOL向上を農業を通じて実現したいと感じる方が増えてきています。
- 第三者継承
- 新規就農をする際に、家族・親族以外の第三者が営んでいた農業経営事業を継承すること。継承するものには、農地や農機具、施設、土地といった有形資産のみならず、経営技術やノウハウ・販売経路など無形資産も引き継ぐ場合が多い。円滑な継承を実現するために、自治体や各エリアのJAをはじめとした担い手育成関連の団体がサポートをしているケースがほとんどです。初期投資が少なくなるため、新規就農者が独立する場合に希望するケースが多いが、全国的に統一したルールがあるわけではなく、個別に相談が必要なため時間を要することが多い。近年では第三者継承の事例も急速に増えつつあり各自治体で事例を持っていることも少なくない。自身が就農を希望するエリアがある場合は、農業研修に入る前に第三者継承を活用した独立を将来的な視野に入れていることを伝えることで、第三者継承に関する情報が得られやすくなるため積極的に自治体・担い手育成関連の団体に伝えるようにしてみましょう。
- 農業法人
- 露地栽培や水稲栽培のような土地利用型農業をはじめ、施設園芸、酪農、畜産など、農業を営む法人をあらわす総称。組織形態としては、会社法に基づく株式会社や合名会社、農業協同組合法に基づく農事組合法人に大別されます。
- 担い手
- 担い手は認定農業者とも呼ばれる、農業に従事する新規参入者のこと。農業に従事する際に、担い手になることで、国や自治体からさまざまな支援を受けることができるようになります。農業経営基盤強化促進法に基づいて、農業経営改善計画書など必要な書類を市町村に提出することで、認定を受けることが可能です。申請方法や、計画書の作成は地元のJAの営農支援や担い手育成関連の団体がサポートをしてくれることが多いので、申請先の市町村に問い合わせをしてみることをおすすめします。
- 農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)
- 新規就農者の準備費用と就農後の経営を支援する公的制度のこと。「準備型」「経営開始型」という2種類があり、対象者は原則として就農時に49歳以下であることが条件となっています。「準備型」の申請をすると年間最大150万円を最長2年間交付されます。親元就業の場合も研修後5年以内に事業を継承するか共同経営者として農業法人を運営することが求められ、独立就農の場合は期間内に認定農業者もしくは認定新規就農者となることが求められます。「経営開始型」は、就農後の経営を安定されるための資金で最長で5年、年間最大150万円(4~5年目は最大120万円)が交付されます。実務経験がなかったり、親元就農以外の場合に、資金のサポートを得ながら生活基盤を安定させることができます。
- 専業農家
- 農水省の定義によると「世帯員のなかに兼業従事者(1年間に30日以上他に雇用されて仕事に従事した者または農業以外の自営業に従事した者)が1人もいない農家」と定義されており、分かりやすくいうと、農業から得られる収入のみで生計を立てている農家のことを指しています。専業農家には効率良く農業に取り組めるというメリットがある一方で、天災や市場変化をダイレクトに受けるため、収入の増減を自力で避けられないケースもあるというデメリットもあります。
- 兼業農家
- 農水省の定義では「世帯員のなかに兼業従事者が1人以上いる農家」である。農業以外にも収入を得られる仕事を有している農家をあらわしています。専業農家と比較すると、農作業に割く時間や労力が限られるものの天災や市場変化に対応できる別の収入源を確保できるというメリットもあります。
- 施設栽培
- ビニールハウスやプラスチックハウスなどの栽培施設を活用し、天候や気象条件から受ける影響を制御しながら、農作物を栽培する方法。露地栽培に比べると、栽培面積が少なくなることから、比較的単価が高い農作物で採用されることが多い栽培方法です。出荷時期などの調整をしやすいことから年間を通じて安定的な収入予想を立てやすい他、施設内の環境制御をスマート農業で自動制御することも可能です。
- 露地栽培
- 屋外の農地で作物を栽培する方法。農地の土壌と、エリアの気候に合う農作物を栽培するため、栽培する農作物の種類は制限されるものの、本来生育する環境で農作物を栽培するため、旬の野菜を収穫・出荷することが可能です。また、農業と言って誰もがイメージする太陽の下で農作物の世話をすることを体現するためには露地栽培。ですが、新規就農者には広大な農地が必要なため実際にはハードルが高いかもしれません。
- 農業協同組合
- Japan Agricultural Cooperativesの頭文字をとってJA(ジェイエー)と呼ばれるのが農業協同組合。組合員に対し、農業技術の支援や普及を行ったり、営農計画の作成をサポートしているほか、農業資材の共同購入や、大型投資をする際の融資や共済の事業も行っています。また、組合員が出荷した農作物をいつ、どこに、いくらで販売するのかといった販売先の確保や価格交渉を行うことで組合員の利益を守り、組合員が生産作業に専念できるようにしています。
- 青年等就農資金
- 新規で農業経営を営む青年等に対して、農業経営を開始するにあたり必要な資金を長期・無利子で貸し付けている支援制度。国が新規就農を促進するために行っている事業であり、2023年度までに40代以下の農業従事者を40万人以上にする方針を掲げています。就農準備に幅広く活用できる資金であり、融資対象者は認定新規就農者の認定を受けた個人、または法人でも申請が可能です。融資限度額は3700万円で返済終了時まで無利子で貸し付けを行っています。
- 養鶏
- 畜産の一種で、食用鶏の生産や鶏卵の採卵を目的として鶏を飼養すること。育て方もさまざまで、大規模に機械化された養鶏場で行う養鶏と小規模ながらブランド地鶏のように高付加価値を付けて育てる養鶏などがあり、それぞれ働き方も大きく異なります。養鶏のお仕事で大切な業務は鶏の健康管理であり、病気の前兆を見逃さず適切な処置を行うことが必要です。多い場合は一つの施設に数万羽の鶏を飼養している場合もあるため伝染病の知識や備えを求められます。一方で、ふ化~出荷までの期間が短い場合は50日間程度であるため、飼養の結果が見えやすく、やりがいに繋がりやすいという魅力があります。
- 酪農
- 家畜を飼育する産業を「畜産」と表現しますが、「酪農」は「畜産」の一部門であり、乳用牛を飼養し、生乳やチーズ・ヨーグルトなど乳製品を生産する畜産のことを指しています。牛乳を搾る乳用牛では、白と黒のホルスタインがほとんどを占めますが、近年ではジャージー牛などを飼養する酪農家もいます。牛の種類により当然ながら生乳の風味が異なり、自社でアイスクリームなど6次化製品まで生産する牧場も珍しくなくなってきました。酪農の牧場には、乳用牛しかいないと思われがちですが、親牛は妊娠・出産を経て生乳を絞れるようになるため定期的な授精が必要となります。親牛が産む仔牛は、乳用牛の場合もありますが、F1種と呼ばれる和牛交雑種の場合もあり、そうして生まれた子牛は肥育牛を育てる畜産農家に出荷されていきます。また、北海道などでは、牛が食べるための牧草も自分たちで育てて収穫することが多く、収穫シーズンは通常の牛舎作業に加え牧草収穫作業も行うためハードな毎日に。しかし、牧草を海外から購入する地域も多い中、自分たちで牧草を育てると海外情勢の変化による価格変化の影響を受けにくいなどのメリットもあります。酪農は、生き物を相手にするため、休めないという印象を持っている方も多いかと思いますが、近年は各地域の農協や自治体で酪農ヘルパー利用組合を運営している場合が多く、酪農ヘルパーと呼ばれる酪農業専門のスタッフが業務をサポートしてくれるサービスが普及してきました。酪農ヘルパーのサービスを利用して、お休みを得たり、家族で旅行をするなど余暇を楽しむことも可能になり、酪農業界も働き方改革が進んでいます。
- 養豚
- 養豚とは、豚を飼育し、食肉となる肉豚や繁殖用の種豚(しゅとん)を生産する仕事のことです。養豚経営はその内容によって大きく「繁殖豚経営」「種豚経営」「肥育豚経営」の3つに分けられます。「繁殖豚経営」とは、繁殖用の雄と雌の豚を飼育して交配させ、生まれた子豚を市場に出荷します。「種豚経営」とは豚の繁殖や改良などの元になる種豚を生産することで、ブリーダー業というとイメージが付きやすいかもしれません。最後に「肥育豚経営」とは市場で子豚を仕入れ、肥育し、食用に適する肉豚として出荷することです。現在、日本の養豚の主流は繁殖から出荷までを一貫して行う一貫経営です。繁殖豚と肥育豚とでは飼育方法も異なるため、一貫経営の養豚場は「繁殖(分娩)豚舎」「育成豚舎」「肥育豚舎」の3つの豚舎に分けて飼育しています。